2011年06月07日
低迷する欧州のIPO市場、てこ入れには公開価格の大幅引き下げが必要
ロイターニュース
〔IBウオッチャー〕低迷する欧州のIPO市場、てこ入れには公開価格の大幅引き下げが必要
[ロンドン 6日 ロイター] 低迷する欧州の新規株式公開(IPO)市場のてこ入れには公開価格の大幅な引き下げが必要だという点で銀行と投資家の見解は一致しているようにみえる。しかし「言うは易く行うは難し」だ。
自分の持ち分の評価額を堅持したいオーナーは公開価格の引き下げに消極的で、IPOを手掛ける銀行は案件が成立せず、苛立ちを強めている。
欧州では年初来に15件以上ものIPO計画が撤回された。また商社のグレンコア<GLEN.L>の例に見られるように、IPOが行われても取引後に株価が公開価格を下回るケースがほとんどだ。
ロイヤル・ロンドン・アセット・マネジメント(運用資産400億ポンド強)の最高投資責任者(CIO)、ロバート・タルブット氏は「欧州の過去1年間のIPOの実施状況はかなりばらつきがある。投資家が全体の進め方に疑いの目を向けがちなのは当然だ」と話した。
欧州ではこれまでにテレフォニカ<TEF.MC>傘下のコールセンターのアテント、ドイツの衣料品チェーンのアドラー、ポーランドの産炭会社JSWなどがIPO計画を公表しており、6日には新たにロシアのグローバル・ポーツが夏前にIPOを行うと発表した。
しかし衣料のモンクレールが投資会社のユーラゼオ<EURA.PA>に株式を売却することに合意した後、IPO計画を撤回した事例は、欧州のIPO市場の状況を如実に示している。事情に詳しい筋によると、モンクレールはIPOで想定されるよりもかなり高い価格で自社株をユーラゼオに売却したという。
株式資本市場(ECM)担当のバンカーは「IPO市場はちょっとした後押しを必要としている。バイサイドは懐疑的になり始めており、公開価格のかなりの引き下げがなければ必ずしも買いには動かないだろう。株式を公開して資金を調達したいのならば、値引きを受け入れなければならない」と述べた。
<機能不全>
市場がうまく機能せず、銀行と投資家の関係はぎくしゃくし始めている。銀行は企業が公開価格についてかたくなせいだと非難し、投資家は銀行が魅力的な案件を持ってこないと主張している。
F&Cアセット・マネジメントのファンドマネジャーのキャスリーン・スタンリー氏は「気に入っている企業のIPOに関する会合にたくさん出席したが、しばらくその気になるような案件がない」と話した。また「苛立ちを感じている。IPOを望んでいる企業と企業にアドバイスするブローカーの間、ブローカーとファンドマネジャーの間など、業界全体が緊張状態にある。今は全体がうまく行っていない」と述べた。
銀行筋によると、投資家がIPOへの参加に消極的になったため、そうした状態でもIPOに関心を持ち続けている少数の投資家が公開価格について大きな影響力を振るうことが可能になっており、中には20%もの価格引下げを要求する例もあるという。
IPOの成功が見当たらず、悪循環から抜け出る兆しはみえない。銀行筋によると、特に中小のIPO案件は苦境にあるという。
欧州のIPO市場は7月半ばから9月まで開店休業の状態となるため、年末近くにならないとIPOがまとまらない可能性が高まっている。ECM部門のグローバルヘッドは「今の混乱があと3週間続けば、市場関係者は9月に会おうと別れの挨拶をするだろう。プライシングの力学が投資家に有利になっているのは間違いない」と話した。


